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金属加工のメイン工作機械でもあるマシニングセンタとNC旋盤ですが、大きな違いって分かりますか?
分かっているけど深くまで知らないな~
何となく知っているつもりでも、今さら深い所まで人に聞けないもいるでしょう。
本記事はマシニングセンタとNC旋盤の特徴を未経験でも安心できる内容になっています。
マシニングセンタとNC旋盤の特徴
先ず最初にマシニングセンタとNC旋盤の基本的な特徴は以下の通りです。
特徴 | マシニングセンタ | NC旋盤 |
---|---|---|
用途 | フライス加工、穴あけ加工、ねじ切り加工、多様な加工 | 円柱形状の外側や内側の加工、ねじ切り |
加工方法 | 工具が回転してワークを削る | ワークが回転して固定された工具で削る |
軸の制御 | 多軸(X軸、Y軸、Z軸、回転軸など) | 主に2軸(X軸、Z軸) |
精度 | 高精度な加工が可能 | 高精度な円筒形状の加工が可能 |
工具交換 | ATC(自動工具交換装置)により自動で工具を交換 | 手動または自動工具交換装置(ATC)が付いている場合もある |
複雑な形状の加工 | 可能 | 制限がある |
プログラミング | 複雑なプログラムが必要(CAMソフトなどを使用) | 比較的簡単なプログラムで操作可能 |
使用例 | 自動車部品、航空機部品、精密機械部品の製造 | 車軸、シャフト、ホイールの製造 |
自動化の程度 | 高い自動化が可能 | 中程度の自動化が可能 |
操作の簡単さ | 複雑(専門知識が必要) | 比較的簡単(基本的な知識で操作可能) |
設置スペース | 大きめ | 比較的コンパクト |
補足ですが、複合機(マシニングセンタとNC旋盤が合体したような工作機械)が多目的に加工してくれるため、多くの企業が使っています。
1つの工作機械で切削加工全てこなす事ができますが、機械操作、プログラムもかなり複雑化しています。
僕自身使っていますが、両方の特徴を理解していないと使いこなすのは難しいでしょう。
複合機は干渉しやすく、修理費用が数百万単位に上ります。
とても初心者が使うような工作機械ではありません。
マシニングセンタとは
マシニングセンタとは、工具が回転してワークを削り、ザックリ言うとボール盤、フライス盤がセットになったような工作機械です。
ボール盤の特徴
ドリルが回転してハンドルレバ―を下すとワークに穴をあける事が出来る。
主な加工用途
- ドリルで穴開け
- ネジ立て(タップ)加工
フライス盤の特徴
テーブルをハンドルで上下左右動かし、フライスカッタ―を回転させて平面を削る。
主な加工用途
- 平面加工
- ミゾ加工
2つの特徴が合体したのがマシニングセンタで、ATC(自動工具交換装置)とプログラムによって、複雑な加工を大量生産出来ます。
マシニングセンタの種類
マシニングセンタの種類は4つ存在します。
- 立型マシニングセンタ(Vertical Machining Center, VMC)
- 横型マシニングセンタ(Horizontal Machining Center, HMC)
- 門型マシニングセンタ(Gantry Machining Center)
- 5軸制御マシニングセンタ(5-Axis Machining Center)
それぞれの主な特徴を1つずつ解説して行きます。
立型マシニングセンタ(Vertical Machining Center, VMC)
- 特徴: 主軸が垂直に配置されている。
- 用途: 板状のワークや比較的薄い部品の加工に適している。
- 利点: 他のマシニングセンタより操作しやすく比較的分かりやすい。またテーブル内のスペースが有効活用出来る。
- 欠点:切りくず排出がされにくく工具破損しやすい
マシニングセンタの中でも扱いやすいのが立型マシニングセンタです。
僕自身も工作機械は立型マシニングセンタから入りました。
まさしくマシニングセンタの入門編と言った存在です。
もし勤めている会社に立型マシニングセンタがあるなら、ワークの設置方法、ATCの扱い方、プログラム作成など基礎的な事を学んでしまいましょう。
関連記事を貼っておきます。
横型マシニングセンタ(Horizontal Machining Center, HMC)
- 特徴: 主軸が水平に配置されている。
- 用途: 大きなワークや複雑な形状の部品の加工に適している。
- 利点: 切りくずの排出が良く、連続加工に適している。ワークを回転させることで複数面の加工が可能。
- 欠点:テーブル(イケ-ル等)が回転する仕組みによりプログラムが複雑化している。操作性は良くない。
大きな部品や複雑形状を大量生産する横型マシニングセンタは職場の稼ぎ頭的な存在になります。
「機械を深く理解しなくていいから、ワークの取り外しだけやっていればいい」という会社もあるかもしれません。
稼ぎ頭だけあって機械を止めないように細心の注意を払っている会社は多いと思います。
複雑形状を大量生産するだけあって、プログラムもかなり複雑なので多くの会社は生産技術部を設けています。
直接作業するオペレータと生産技術部がコミュニケーションを取って扱うような工作機械が横型マシニングセンタの主な特徴です。
門型マシニングセンタ(Gantry Machining Center)
- 特徴: 大型の門型構造を持ち、大きなワークを固定して加工する。
- 用途: 大型金型や航空機部品の加工に適している。
- 利点: 大きなワークの高精度加工が可能。剛性が高く、重切削に適している。
- 欠点:かなりの大型工作機械なので設置場所が限定される
車や航空機の金型を作ったりする門型マシニングセンタは見かける機会が少ないでしょう。
勤めている会社に門型マシニングセンタが存在するならとても珍しいですよ。
僕は機械の展示会で見た程度で実際に加工している所を見たことがありません。
第一印象はでかいでした。
あまり詳しくはありませんが、立型マシニングセンタに近い構造で、加工方法も似ている所があるようです。
チャンスがあったら一度加工している所を見てみたいです。
5軸マシニングセンタ(5-Axis Machining Center)
- 特徴: X軸、Y軸、Z軸に加え、A軸(回転軸)、B軸(傾斜軸)を持つ。
- 用途: 複雑な3次元形状の加工、航空機部品や医療機器など高精度な部品の製造に適している。
- 利点: ワンチャッキングで複数の面を加工できるため、精度が高く、作業効率が良い。
- 欠点:複雑すぎて分かりにくい。
ワンチャッキングで加工出来るので精度が高い製品が作れるのが最大の利点ですが、初心者にとっては機械構造が複雑すぎて頭がパンクします。
たしかに1つの工作機械で精度が良い完成品に持っていけるのはいいのですが、ワークが回転(A軸)、さらに斜め方向に工具が動く(C軸)をX,Y,Z軸と合わせて考える必要があります。
万が一ぶつけたりしたら修理費がめちゃくちゃ高いので、細心の注意を払って作業する必要があります。
僕は5軸加工機で車のホイールを加工していましたが、機械操作を覚えるまで相当苦労しました。
NC旋盤とは
NC旋盤とは、コンピューター制御(数値制御)を使う旋盤です。
主軸にワークを取り付けて回転させながら、工具(バイト)で円筒状円錐状に外径加工、内径加工を行います。
リンゴの皮むきを想像してもらうと分かりやすいですね。
NC旋盤の種類
NC旋盤の種類は大きく分けると4つ存在します。
- 水平型NC旋盤(Horizontal NC Lathe)
- 立形NC旋盤(Vertical NC Lathe)
- スイス型NC旋盤(Swiss-Type NC Lathe)
- 複合加工機(Mill-Turn Center)
それぞれのNC旋盤の特徴を解説していきます。
水平型NC旋盤(Horizontal NC Lathe)
- 特徴: 主軸が水平に配置されている標準的なタイプのNC旋盤。
- 用途: 一般的な円筒形部品やシャフトなどの加工。
- 利点: 構造がシンプルで操作しやすい
- 欠点:切りくずが機械内に溜まりやすく、定期的にエアガンで清掃が必要。
ごく一般的NC旋盤で初めて工作機械に触る人でも比較的簡単に機械を動かせてしまうのが特徴です。
一般的な3つ爪チャックで、ワ-クの取り付け作業のみなら、エアガンで爪の清掃を怠らなければ特に加工知識はなくても機械を動かす事が出来ます。
僕の勤めている会社では、何の知識もないパ-トの人が取り付け作業しています。
プログラム自体も入門編みたいな位置づけで比較的分かりやすいです。
立形NC旋盤(Vertical NC Lathe)
- 特徴: 主軸が垂直に配置されている旋盤。ワークが垂直に取り付けられる。
- 用途: 大型で重いワークや形状が複雑な部品の加工。
- 利点: 重力を利用してワークを安定させるため、大型ワークの加工に適している。設置面積が少なくて済む。
- 欠点: 高さのあるワークの加工が制限される。工具の交換や調整が水平型に比べて難しい。
大きなワークを安定した状態で加工するのに適しているNC旋盤です。
クレ-ンなどでワークを釣り上げながら設置して、ワークの位置出しを行います。
水平型以上に遠心力が働くので、位置だしを怠るとワークが飛ぶ可能性が高く大変危険でもあります。
また、工具の交換が水平型と比べても面倒で、交換時間に多くの時間が掛かってしまいます。
スイス型NC旋盤(Swiss-Type NC Lathe)
- 特徴: ワークをガイドブッシュで支持しながら加工を行う。
- 用途: 小型で細長い部品の高精度加工。特に医療機器や時計部品など。
- 利点: 細長い部品の高精度加工が可能。ワークのたわみを防ぎ、精度を保てる。
- 欠点: ワークの長さに制限がある。機械の操作と設定が複雑で、専用の技術が必要。
細長いワークを金太郎飴のように切り落としながら何個も大量生産するNC旋盤です。
ワ-クを設置する機械が別になっておりNC旋盤と連動させる必要があって、その関係上操作が複雑化しています。
連動が上手く行かなくて加工が出来ない事があり、復帰するのに時間が掛かる事もしばしばあります。
多くの会社は何台も掛け持ちさせる事が多く、数分単位で完成品が出てくるため検査やら、選別やらで大忙しです。
僕自身スイス型は4台掛け持ちした事がありますが、次々と完成品が出てくるので大変でした。
もうやりたくないのが本音です(笑)
複合加工機(Mill-Turn Center)
- 特徴: フライス加工機能と旋盤機能を組み合わせた機械。
- 用途: 一台でフライス加工と旋盤加工を行う必要がある複雑な部品の製造。
- 利点: ワンチャッキングで複数の加工が可能。生産性が高く、精度も向上。
- 欠点: 機械のコストが高い。操作とプログラミングが複雑で、熟練した技術者が必要。
複合加工機は旋盤機能とフライス機能が合体した工作機械です。
ワンチャックでマシニングセンタの加工も行える為、製品の加工精度も高く高品質な製品を作り出す事が可能です。
しかしながら、かなりの機械精度が重視され、誤って機械をぶつけたりしたら数百万の修理費が取られるし、干渉の仕方によっては元の機械の精度に戻らない事もあります。
以前、複合機をぶつけた事があったのですが、メーカ-から数百万の修理費が請求され、以前のような機械精度に戻らないと言われた時には顔が青ざめました。
会社によってはNC旋盤は複合機しかない所もあるようですが、扱いはくれぐれも注意して下さい。
多目的に加工できるマシニングセンタとNC旋盤は操作が難しい
今回紹介したマシニングセンタとNC旋盤の特徴は以上になります。
僕の考えなのですが、たくさん経験してきた人は強靭な精神力の持ち主と思っています。
なぜなら、多目的に加工できる工作機械は覚える事が多いだけではなく、機械をぶつけないように機械操作中はかなりの注意力と精神力が求められるからです。
この先マシニングセンタとNC旋盤の特徴が知りたい時は本記事を思い出して下さい。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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